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読書ノート / 社会
本書には次の3編が収録されています。「折伏鬼」は電子書籍として復刻され、アマゾンkindleと楽天koboで読むことができます(創価学会をモデルにしたあの問題作が28年ぶりに電子書籍で復刊!)。また、「虚構の覇者」と「会長の野望」は、「新折伏鬼の野望」として復刻され、アマゾンkindleと楽天koboで読むことができます。 「折伏鬼」別冊文藝春秋143号(1978年3月) 「虚構の覇者」書き下ろし 「会長の野望」オール読物(1980年11月) 「折伏鬼」は、作者の分身といえる創価学会の元会員が、第2代会長・戸田城聖の実像を追うという構成になっています。作者は「入信が昭和38年で、40年には退転(脱会)したので、活動期間は3年弱」ということで、その経歴を物語の主人公にダブらせています。 折伏(しゃくぶく)とは、相手を論破して正法に導くことを指す仏教用語で、穏やかに説得する摂受(しょうじゅ)とは対極にあります。戸田城聖が会長だった頃の創価学会の折伏大行進という布教活動は、攻撃的暴力的なものであり社会問題ともなっていました。この作品のタイトルである折伏鬼は戸田城聖を指すものと思われます。作中には、創価学会関係者をモデルにした人物が登場します。モデルとされた人物と作中人物の関係は次のようになるものと思われます。作中登場人物の主な出来事を年代順にまとめると次のようになります。作中の展開と実際の出来事はおおむね一致しています。 聖護道会→創価学会 山口利三郎→牧口常三郎 多田皓聖→戸田城聖 河田大介→池田大作 椎原カネ→柏原ヤス 石原敏男→石田次男 金泉清→小泉隆 中島晃助→原島宏治
そして、ここからは、ネタばらしになるので、あまり詳しく書けませんが、以前の闘争的な多田皓聖が、病魔に冒され、権力闘争にも疲れ、一種の諦観を持つに至ったのではないかと結論付けているようです。 ただ、多田皓聖が、戦後、なぜ宗教ではなく事業に専心したのか、そして、その事業に失敗し、理事長を解任されたにもかかわらず、それからまもなく会長に就任できたのはどうしてなのか、などなおも謎は残ります。 その謎を解く手がかりを得るのは、聖護道会を脱会し10年以上たって、フリーのレポーターになってからのことです。 「虚構の覇者」は、暁出版(潮出版?)社員の尾形克也という青年が主人公で、「新世紀の祭典」(平和文化祭?)のリハーサルと本番の様子を通して、国内での組織の停滞を打破するため、海外布教に乗り出す聖護道会(創価学会)の姿を伝えています。 「会長の野望」は、聖護道会の元中堅幹部が主人公で、河田大介を謗法者(仏の教えに背く者)と見て、その仮面を暴こうと、学会内部の権力闘争、言論妨害事件、宗門との対立お裏に込められた真の狙いを探る姿が描かれています。 |