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 次はあるの? 
2021/9/11
 マイクロソフトは、Windows 11 を2021年10月より提供を始め、無償アップグレードも同時に始まりました。その一方で、Windows 10 のサポートは2025年10月14日で終了します(Microsoft Docs)。確か、Windows 10 は「最後のWindows」だったはずですが、さて……

「最後のWindows」ではなかった

 ITmediaは、Windows 10 について、次のように説明していました(Windows 10は最後のメジャーアップグレードになる?)。
 2015年1月末に米国で開催されたWindows 10に関するプレスイベントでは、Windows 10の新機能だけでなく、MicrosoftのOSビジネスに関する大きな変革が示された。今後、Windows OSは、大きなメジャー番号やブランド名(Windows XPやVistaなど)をリリースせず、Windows 10を基本とし、Windows Updateを使って頻繁に機能のアップデートを行っていく。つまり、Windows 10のリリース後の数年後にWindows 11が出ることはない。
 Microsoftは、OSのメジャーアップグレードによって利益を得るという従来のビジネスモデルを捨て、AppleのiOSやMac OS X、GoogleのAndroid OSやChrome OSなどと同じようなビジネスモデルへ大きな方向転換をしたといえる。
 今後、Windows 10にアップグレードしたPCは、Windows XPのように決められたライフサイクル期間でサポートが終了するということもなくなる。つまり、ハードウェア自体が壊れるまで新しいWindows 10を使い続けることができる。このことで、2014年4月のWindows XPのサポート終了で起こったような混乱を避けることができるだろう。
 これを見る限りでは、Microsoftは2015年1月末、プレスイベントで「Windows 10はサポートが終了することがなく」「Windows 11が出ることはない」、つまり「Windows 10は最後のWindows」と明言したことになります。しかし、前述のように、マイクロソフトは、Windows 11 の提供を始め、Windows 10 のサポートを2025年10月に打ち切ると発表しました。見事に前言を翻したことになります。
 多くの人が懸念したように、やはり「Windows 10 の次はあった」のです。

OSは壊れることはないが
 オペレーティングシステム(OS)は、ソフトウェア(プログラム)ですから、ハードディスクやマザーボードなどのハードウェアとは違って壊れるということはありません。ただし、部品が壊れ、修理に多額の費用を要するなどの理由で、パソコンを買い換えれば、OSも廃棄されることになります。また、CPUの性能向上やHDD・SSDの大容量化に伴い、OSが時代遅れになるということもあります。また、Microsoftがサポートを終了することにより、OSの買い替えを促すということもあります。
 Windowsの各バージョンの発売時期とサポート終了時期は次のようになります。「販売終了」は、Windowsの搭載されたパソコンの販売終了時期です。パソコンの販売終了後も、OSとしてのWindowsは、小売店に在庫が残っていれば入手可能です。 
発売 販売終了 サポート
終了
95 1995/11 2001/12 システムリソース不足が欠点
XP 2001/10 2010/10 2014/4 32ビット版で「2TBの壁」
Vista 2007/1 2017/4 「重い・遅い」と不評
7 2009/10 2016/10 2020/1
8 
8.1
2012/10
2013/10

2016/10

2023/1
Windows Phone の宣伝版
スタートメニューが復活
10 2015/7 2024/3 2025/10 個人情報を収集、管理強化

「もうやることがない」というのが実情?
 マイクロソフトの News Center Japan は、Windows 11 について、「11のハイライト」を挙げています(Windows 11、10 月 5 日より提供開始 - News Center Japan)。いずれも単なるデザイン変更か、従来からある機能の焼き直しに過ぎず、バージョンアップと呼べるほどの内容ではありません。OSとしての機能は、Windows 7 でほぼ完成しているので、それ以上は「もうやることがない」というのが実情ではないかと思われます。 
  11のハイライト 私の感想 
1  新しいデザインとサウンド  単なるデザイン変更 
2  Start ボタンは、あなたとそのコンテンツを中心に据えています  単なるデザイン変更
3  Snap Layout 及び Snap Group、Desktop がマルチタスクをさらに強化  単なるデザイン変更
4  タスクバーに統合された Microsoft Teamsのチャット  チャットに興味はない
5 AI を活用したパーソナライズされたフィードであるウィジェット  iPhoneの真似 
6 今までで最もゲームに適した Windows ゲームに興味はない
7 まったく新しいデザインで再構築された Microsoft Store Microsoft Storeに興味はない 
8 障碍のある方に向けてアクセシビリティの機能強化 これまでやってなかったの? 
9 開発者やクリエイターに新たなチャンスをもたらします 私には無関係 
10 タッチ、デジタルペン、音声入力の体験の向上 私には無関係
11 ハイブリッドワークのための OS 意味不明 

できるだけ長く使っていただく
 前述のように、OSが壊れるということはありません。ただし、OSの組み込まれた機械が壊れれば、OSも廃棄されることになります。通常は、OSだけが別に販売されることはありません。OSが単体で販売されているのはWindows だけです。なお、LinuxやchromeOSは、無料で入手できます。
 各種デバイスとOSの関係は次のようになっています。
スマートフォン タブレットPC PC
Apple iOS iPadOS macOS
Google Android Android/chromeOS chromeOS
Microsoft (Windows 10 Mobile) Windows Windows
 Appleは、パソコンメーカーですから、機械とOSはセットで販売しています。現在では、スマートフォンの販売が主な収入源となっています。
 Googleは、検索サービスを媒介とした広告を主な収入源とする企業です。また、メーカーにAndroidを無料で提供し、Androidの組み込まれたスマートフォンを広告媒体とすることによっても、利益を上げています。
 Microsoftは、Windowsの成功で巨大企業に成長しましたが、現在では、収益の半分はクラウドサービスとオフィスソフトが占め、Windowsの割合は16.2%に過ぎません(Amazon・Microsoft・Alphabet・Apple・Facebookの収益源が何かをグラフで見比べてわかること - GIGAZINE)。スマートフォン分野には、Windows 10 Mobileで食い込みを図りましたが、失敗し撤退しています。
 Microsoft の Windows には、サポートの終了がありますが、Apple の製品にも修理サービスや部品の提供期間があります。しかし、これはあくまでもハードウェアの問題であって、ソフトウェア(OS)に使用期限を設けているわけではありません。
 Apple は自社の製品の耐用期間について、次のように述べています(保証期限の切れた Apple 製品の修理サービスを受ける)。「できるだけ長く使っていただく」ということは、デバイスが壊れるまでは使い続けることができるということ、つまり、OSには使用期限がないことを意味します。
Apple の環境への取り組み
Apple 製のデバイスは、長くご利用いただけるように設計されています。耐久性に優れた素材で作られ、Apple の信頼性試験ラボにて徹底したテストを受けています。デバイスをできるだけ長く使っていただくことが、地球に優しい取り組みにもなります。Apple の環境への取り組みについて詳しくは、https://www.apple.com/jp/environment をご覧ください。
 Apple製品の修理サービスや部品の提供期間は、具体的には次のように定められています。全体的にかなり分かりにくい説明となっていますが、大体次のようなものであると思われます。
 製品を販売店に供給した最終日から最低5年間は、修理サービスや部品の提供を受けられる。5年以上7年未満については、在庫があれば提供を受けられる場合もある。7年以上が経過したら、提供はすべて終了する。
ビンテージ製品  販売店への供給を停止した日から5年以上7年未満の製品
オブソリート製品 販売店への供給を停止した日から7年以上が経過した製品:ハードウェアサービスをすべて終了 

サポートを終了しなくても、Windows は売れる
 一方、Windows の場合は、Windows の組み込まれた製品の販売終了から4年ほどでサポートを終了しています。サポートを終了するというのは、アップデートしなくなるということですから、Windows を使えなくなるわけではありません。そもそも、Windows 7 では、次のように、アップデートしないという設定も可能でした。

 今使っている32ビット版の Windows 7 では、「更新プログラムを自動的にインストールする(推奨)」にしてありますが、サポートが終了したはずなのに、いまだに更新が続いています。一方、64ビット版の Windows 7 の方は、更新ができなくなっています。
 今回、「Windows 10 は最後のWindows」という前言を翻してまで、Windows 11 を発売する背景には、「サポートを終了しなければ、いつまでも Windows 10 を使い続けられてしまう」という危惧があったのかもしれません。
 しかし、パソコンが壊れれば、Windows も廃棄されることになります。新しいパソコンを買えば、Windows はインストールされています。つまり、サポートを終了してもしなくても、Windows は売れるのです。
 もちろん、サポートを終了することにより、旧バージョンのOSが賞味期限切れだという印象を与えれば、パソコンの買い替えを促す効果はあります。
 しかし、パソコンは、部品が壊れても、取り替えれば寿命を延ばせます。個人的な体験から、パソコン部品の寿命の短いものから順に並べると、次のようになります。
SSD>HDD>マウス・キーボード>電源ユニット>
マザーボード>CPU>メモリー 
 SSDは平均4〜5年ぐらいの寿命で、その他の部品は相当長く使えますし、壊れれば交換すれば良いだけの話です。
 結局、パソコンの寿命はマザーボードの寿命により決まりますが、10年以上使えるものもあると思います。OSに賞味期限を設けて、まだ十分に使える機械を廃棄させるような商法は、SDGsの観点からも見直すべき時期に来ているように思います。
 さて、Windows 11 の次はあるのでしょうか。